天台宗の葬儀

天台宗は、日本にあるさまざまな仏教の原点を築いた宗派で長い歴史があり、日本の仏教文化に大きな影響をもたらしたと言われています。天台宗の葬儀は他の仏教宗派と異なる特徴や独自のマナーがいくつもあるので、葬儀を執り行う場合や参列する際に知っておくと役立つ情報を集めてみました。天台宗とはどのような宗教なのか、確認していきましょう。

天台宗とは

天台宗は、今から約1200年前の平安時代の初期に伝教大師である最澄(さいちょう)が唐(中国)から持ち帰り日本全国に広がっていきました。「すべての人が仏に成れる」 という教えを説いており、日本ではさまざまな仏教の教えを融合した宗派であることから、総合仏教と呼ばれています。本山は滋賀県と京都府にまたがる比叡山延暦寺。主な経典は「法華経」(ほけきょう)となっており、法華経を唱えることによって日々の懺悔を行います。

天台宗の葬儀の特徴

天台宗には、自らを救って他人の福利を願うことを教える「顕教(けんきょう)」と、この世で悟りを開き大日如来と同体になることを目指す「密教」の2つ仏の教えがあるため、葬儀では人は誰もが仏になれるという教えのもと、主に故人の魂を迷いや苦しみのない仏の元へ送るのが目的で執り行われます。

葬儀は3つの儀式から成り立っており、法華経を読んで懺悔をして生前の罪を薄くする「顕教法要」、阿弥陀仏のお経を唱えて死後の極楽往生を祈祷する「例時作法」、光明真言を読み上げて本尊を供養し故人に祈りを捧げる供養「密教法要」があります。

天台宗の葬儀の流れ

お通夜

  1. 臨終誦経(りんじゅうずきょう):通夜の前日に行われ、故人の枕元で阿弥陀経を読経される
  2. 通夜読経(つやどっきょう):通夜の当日に朝は法華経、夕方には阿弥陀経が読経される
  3. 剃度式(ていどしき):故人が仏門に入門するための儀式で、一般的には髪を剃る真似を行う。剃度式の際は辞親偈(じしんげ)、懺悔文(ざんげもん)、授三帰三竟(じゅさんきさんきょう)が順番に読経される
  4. 授戒式:故人に戒名を与える儀式

葬儀

  1. 導師入場
  2. 列讃(れっさん):穏やかな楽曲が流れる中、故人の臨終を告げる声明(しょうみょう)を唱える
  3. 光明供修法(こうみょうくしゅほう):阿弥陀如来を迎え、故人を仏にする儀式
  4. 九条錫杖(くじょうしゃくじょう):法具である錫杖を振りながら声明を唱える
  5. 随法回向(ずいほうえこう ):故人の成仏を祈り供養をするための声明が唱えられる
  6. 列讃
  7. 鎖龕(さがん):故人の棺を閉じる儀式
  8. 起龕(きがん):故人の棺を起こす儀式
  9. 奠湯(てんとう)または奠茶(てんちゃ):故人の霊前に茶や湯を備える
  10. 引導:故人の生前の業績が讃え、導師が霊前にて故人を極楽浄土へ送り出す儀式
  11. 下炬(あこ):松明や線香で梵字を描き、故人の徳の高さを讃える下炬文を唱える
  12. 法施(ほっせ):読経し念仏を唱える儀式
  13. 総回向偈(そうえこうげ):回向文(念仏の幸徳を回し向ける経文)を唱え、お葬式を終了させる儀式
  14. 導師退場

天台宗の葬儀のマナー

天台宗の葬儀における服装は、一般的な仏式葬儀と同じ。数珠は丸い珠が付いているものではなく、楕円形の数珠で煩悩の数と同じ108つの主玉に四つの天玉が付いているものを使用します。数珠は左手で持ち、合掌する際には人差し指と親指の間にひっかけ、紐の部分を下に垂らして持つようにしましょう。

天台宗の焼香作法について

天台宗の基本的な焼香の回数は3回。霊前で合唱礼拝を行ってから、親指と中指、人差し指の3本の指でお香をつまみ、左手を添えながら額でお焼香をします。お線香を使ってお焼香を行う場合には、1本もしくは3本使用することが一般的。左手にお線香を持ち、ろうそくで点火し、手で仰いで火を消して数珠にお線香の煙をかけてお線香を香炉に立てます。1本の場合は真ん中に、3本の場合は手前に1本、奥に2本立てます。

天台宗のお布施について

お布施の費用相場は授かった戒名や地域、寺院などによって大きく変わります。そのため、葬儀会社やお寺と長い付き合いのある檀家さんにしておくことをおすすめします。また、お布施は新札などできるだけきれいなお札を用意し、4や9などといった数字の金額を包むのはタブーとされているので要注意。包む際は奉書紙やお布施袋に包んでお渡しするようにしましょう。

天台宗のお香典について

天台宗の香典の表書きは「御霊前」または「御香典」となっています。香典の相場は、一般的に故人との関係性が近いほど高くなる傾向にあります。1万円程度の金額を包む場合は、水引が印刷されたシンプルな香典袋で構いません。3~5万円以上包む場合は印刷されたものではなく、きちんと水引がついたタイプの香典袋を用意するようにしましょう。

他の宗教でご検討の方はこちらでご確認ください。