真宗大谷派の葬儀

浄土真宗にはいくつもの宗派があります。その中でも真宗大谷派は門徒(信者)が多く、浄土真宗を代表する宗派のひとつ。浄土真宗は宗派によって葬儀のしきたりや作法などが異なるため、喪主として葬儀を執り行う場合はもちろん、葬儀に参列する際も詳しい作法を知らずにマナー違反となることが起きないようにしっかりチェックしておきましょう。

真宗大谷派とは

真宗大谷派は江戸時代初期に徳川家康によって真宗大谷派(東)と浄土真宗本願寺派(西)に分裂したと言われており、浄土真宗の宗派の中で本願寺派に次ぐ規模を持つ宗派。本山は京都にある真宗本廟(通称:東本願寺)で、宗祖である親鸞の御真影を安置しています。

境内にある御影堂は世界有数の大きさを誇る木造建築として、国の重要文化財に指定されています。阿弥陀如来をご本尊とし、人々を救おうとする大きな力を持つ阿弥陀如来を信じ感謝の心をこめて唱える「他力本願」という教えを説いています。

真宗大谷派の葬儀の特徴

真宗大谷派の葬儀は、念仏を唱えていなくても阿弥陀如来を信仰しているだけで成仏できるという教えによって、仏式葬儀で行われる死者が成仏するための「引導」や戒名を授かる「授戒」といった儀式はありません。そして、他の浄土真宗と大きく異なる点は、葬儀が「葬儀式第一」と「葬儀式第二」の2部構成となっているところ。

一昔前までは葬儀式第一は自宅で読経や焼香を行い、葬儀式第二は斎場で行われていましたが、現在は場所を変えずに同一会場で執り行われています。

真宗大谷派と浄土真宗本願寺派の違い

真宗大谷派と浄土真宗本願寺派は、数ある浄土真宗の宗派の中でも、同じ流れをくむ宗派ですが、大きく異なる点は以下のようになっています。

葬儀の式次第

  • 真宗大谷派:葬儀式が2部構成
  • 本願寺派:簡素的な葬儀式

お焼香の回数

  • 真宗大谷派:2回
  • 本願寺派:1回

お経の唱法・発音

    正信偈(しょうしんげ)という経典は同じですが、唱法や発音が異なります。

    • 真宗大谷派:「句淘」「句切」「真四句目下」「行四句目下」「草四句目下」「中拍子」「中読」「真読」「舌々」の9種類
    • 本願寺派:「真譜」「行譜」「草譜」の3種類

    真宗大谷派の葬儀の流れ

    死後の考え方は浄土真宗の葬儀と同様で、故人はすでに極楽浄土に成仏しているため、死装束を用意する必要はありません。

    葬儀式第一

    真宗大谷派の葬儀は、2つの儀式で構成されているのが特徴です。

    棺前勤行

    1. 総礼(そうらい):全員で敬礼する儀式
    2. 勧衆偈 (かんしゅうげ):中国の仏書「観経疏(かんぎょうしょ)」の玄義分の冒頭にあるお経を唱える
    3. 短念仏十遍(たんねんぶつじゅっぺん):短い念仏を唱える
    4. 回向(えこう):念仏の幸徳を故人に回し向ける儀式
    5. 総礼
    6. 三匝鈴(さぞうれい):小さな鈴から大きい鈴へ順に鳴らす儀式
    7. 路念仏(じねんぶつ):道中(自宅~葬場~火葬場)などの道中で唱えられるお経

    葬場勤行

    1. 三匝鈴
    2. 路念仏
    3. 導師焼香:僧侶がお焼香を行う
    4. 表白(ひょうびゃく):葬儀の趣旨を阿弥陀如来などの仏様や遺族、親族、参列者に対して伝える儀式
    5. 三匝鈴
    6. 路念仏
    7. 弔辞
    8. 正信偈:浄土真宗の経典を唱える
    9. 和讃:阿弥陀如来を褒め称える讃歌
    10. 回向
    11. 総礼

    葬儀式第二

    1. 総礼
    2. 伽陀(かだ):仏徳への賛辞、教理、仏教の真理などの詩で、法事などで最初に吟唱する真宗大谷派において重要な儀式。
    3. 勧衆偈
    4. 短念仏十遍
    5. 回向
    6. 総礼
    7. 三匝鈴
    8. 路念仏
    9. 三匝鈴
    10. 導師焼香
    11. 表白
    12. 三匝鈴
    13. 正信偈
    14. 短念仏
    15. 三重念仏:法然の「選択集」にある「選択本願念仏」の語の中に込められるという三種の念仏義を唱える
    16. 和讃
    17. 回向
    18. 総礼

    その後の流れは他の浄土真宗の宗派と変わりません。出棺後に火葬場にて火葬が執り行われます。

    真宗大谷派の葬儀のマナー

    真宗大谷派では、他教の風習や迷信などはできる限り排除しようとしているため、一般的なお葬式の作法をタブーにしている傾向にあります。死者は穢れではなく極楽浄土で成仏し仏様となっているため、お清めの塩などはありません

    真宗大谷派の焼香作法について

    浄土真宗では焼香をする際、お香をつまんだ手を額まで押しいただく行為はNG。香炉の前で一礼をして合掌してから、右手の親指と中指、人差し指の3本の指でお香をつまんで、香炉にくべます。焼香回数は2回。焼香を終えたら手を合わせて、最期に再度一礼をします。焼香の回数が他の宗派と異なるため、注意して行うようにしましょう。

    真宗大谷派のお布施について

    他の宗派と同じく、真宗大谷派でもお布施を用意しておく必要があります。浄土真宗では故人に戒名ではなく法名が授けられますが、地域や寺院の考えにより違いはあるものの、基本的に法名料という形式で金銭を包むことはありません。ただし、法名を生前に自分で決めておきたい場合や院号を示す場合は、高額なお布施を用意することもあります。

    真宗大谷派のお香典について

    浄土真宗系の宗派と共通で、香典を包む不祝儀袋は無地で白黒の水引が付いたものを使用します。表書きは仏様となった故人や阿弥陀如来に対しお供えするという意味合いを持つ、「御仏前」や「御香典」とするのがマナー。お香典の相場は、故人や遺族の関係性や血縁関係などによって異なるため、一般的な葬儀と変わりません。お通夜に参列する際に受付で渡します。

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