エンバーミングとは
更新日: 2023/10/13
特殊な技術を用いて、ご遺体の防腐処理を施す「エンバーミング」。
日本ではエンバーミングについて馴染みが薄いかもしれませんが、ご遺体の腐敗を防いで見た目も整えられるため、アメリカでは90%以上のご遺体に施すほど浸透した技術です。
エンバーミングは、ご遺体を切開したり動脈などの血管を使って防腐剤を流したりするため、施すには専門の資格が必要です。
今回は、エンバーミングの基礎知識と費用、メリット・デメリットについてご紹介します。
エンバーミングとは
「エンバーミング」とは、特殊技術を用いた遺体防腐処置を施すことです。葬儀まで時間がかかるときや、梅雨や夏などご遺体の腐敗が進みやすい時期に行なわれることが多いです。
ここでは、エンバーミングのタイミングや意味、施す人についてご説明します
エンバーミングはいつする?
お亡くなりになってから葬儀や火葬を待っている間に、安置場所から専門の施設にご遺体を移動させてエンバーミングを行ないます。
一般的には、ドライアイスを使用してご遺体の腐敗を防ぎます。しかし、冬場は20kg程度、夏場は40kg程度のドライアイスを使うため、1日1万円前後の費用が必要です。
顔色の変化はドライアイスだけでは防ぎきれないため、ご遺体の見た目をキープしたり、生前の姿に近づけたりしたいときにご遺族はエンバーミングを希望します。
エンバーミングにはどんな意味がある?
エンバーミングには、「腐敗予防」「感染予防」「ご遺体の修復」の役割があります。
ご遺体は、すぐに腐敗が始まりますが、エンバーミングの特殊な技術によって腐敗を予防。
飛沫感染や接触感染、空気感染をするウィルスや細菌が、ご遺体に付着しているときがあります。エンバーミングによって家族を感染から守ることが可能です。
事故でご遺体に傷があるときや、闘病生活で顔が痩せてしまっているときには、健康な時のような見た目に近づける施術を行ないます。
エンバーミングは誰がする?資格は必要なのか
「エンバーマー」と呼ばれる専門の資格を持った人が、エンバーミングを行ないます。
エンバーミングは、ご遺体を消毒してきれいにするだけではありません。腹部を少し切開して血液や体液などを排出させたり、動脈などの循環経路を利用して防腐剤を注入したりするなど、専門的な知識が必要です。
エンバーマーになるためには、養成学校で2年間学び、IFSA認定のエンバーマー試験に受からなければなりません。国家資格ではありませんが、合格率は50~60%程度であり、合格するためにはしっかりとした知識が必要になります。
エンバーミングの流れ・手順
エンバーミングは、3~4時間程度かかることが多く、搬送の時間を含めると半日程度を要します。
エンバーミングを行なうためには、エンバーミング依頼書(同意書)と死亡診断書(死体検案書)の提出が必要です。お顔の修復を依頼するときは、生前の写真も提出するとイメージとの相違を防げるかもしれませんね。
ご遺体をエンバーミング施設に搬送し、ご遺体の洗浄や消毒を開始します。洗顔・洗髪など見た目を整えたら、体内の洗浄と防腐保全処置を行ないます。洗浄と防腐保全処置のときに、ご遺体の一部を1cm~1.5cm程度切開して血液や体液を排出し、防腐剤を注入。
その後、切開した傷やご遺体が損傷している部分を縫合してから、化粧をしたらエンバーミング完了です。
エンバーミングの費用目安
エンバーミングの費用の相場は、15~25万円程度です。
葬儀費用とは別にエンバーミング費用の用意が必要で、ご遺体の状態によって金額が違います。
別途費用がかかるため、エンバーミングが本当に必要なのか、もしくは8~10万円程度で行なえる湯灌(ゆかん)を依頼するのか、は検討してもいいでしょう。
湯かんについてはこちらでも詳しく解説しております。
エンバーミングのメリット
事故や闘病などで姿が変わったままでは、最後のお別れが苦痛になるときもあるかもしれません。しかし、エンバーミングを行なうと、生前の元気だった様子に近い姿で、最後のお別れが可能です。
また、エンバーミングでご遺体の洗浄・消毒を行なえば、ご遺体からのウィルスや細菌感染のリスクを下げられます。さらに、死後硬直の予防もできるため、故人に触れながらお別れの時間を過ごせるのがエンバーミングの魅力です。
一般的には、ドライアイスを用いてご遺体の腐敗を防ぎますが、エンバーミングを施せばドライアイスの費用も抑えられます。
エンバーミングのデメリット
ご遺体の腐敗を防いだり、見た目を元気だった頃の姿に近づけられたりするエンバーミングですが、ご遺体を切開する必要があります。そのため、ご遺体を傷つけることに抵抗を感じるご遺族もいるでしょう。
さらに、エンバーミング処置のために、半日程度ご遺体と離れなければなりません。自分たちの希望だけではなく、最後の時間を一緒に過ごしたい親族からの同意も必要です。
また、エンバーミングは専門のスキルが必要で、専用の施設で行なわれます。そのため、葬儀費用とは別に15~25万円程度の費用が発生します。