ご遺体の安置について

日本の法律では、ご逝去の後24時間は火葬をしてはいけないと決められています。このため、葬儀までの間、ご遺体を安置できる場所を確保しなければなりません

かつてご遺体は自宅に安置され、葬儀までの間にご家族が集まって最期のお別れをするものでした。しかし、現在の住宅事情を考えると、ご遺体を安置するスペースが確保できない場合も多いでしょう。そこで、ご遺体を安置する場所や流れ、費用について解説します。

ご遺体安置とは?

亡くなったあとすぐに故人の葬儀が執り行われると思われる方もいるでしょうが、地域によっては葬儀までの間に数日間空くことが多いです。このため、ご遺体を葬儀までの期間、どこかに安置する必要があります。しかも、ご遺体は適切な処置をしなければ、時間の経過とともに傷んでしまいます。ご遺体をきれいな状態に保つには、ドライアイスや冷蔵設備で冷やす必要があります。

また、現在は多くの方が病院でお亡くなりになりますが、病院の霊安室は数時間しか使えないことが多いため、すぐにご遺体を安置する場所を決めて搬送しなければならないのです。

このように、慌ただしくご遺体の安置先や搬送の手配をしなければなりませんが、ご遺体の安置している数日間は、ご家族が故人と過ごす最期の時間でもあります。適切な処置をしながら、ご家族最期の時間を過ごすためにも環境について理解しましょう。

ご遺体安置ができる場所

ご遺体を安置できる場所として、自宅か安置施設という2つの選択肢があります。約2~3日間ご遺体を安置する場所なので、メリット・デメリットを考慮して決めましょう。それぞれの安置場所の特徴や安置場所の選び方をご紹介します。

自宅で安置する場合

亡くなった方を住み慣れた場所に戻してあげたいという気持ちから、自宅にご遺体を安置したいと思っているご家族は多いのではないでしょうか?自宅でゆっくり最期の時間を過ごさせてあげたいと思っていても、自宅がご遺体の安置に適していない可能性もあります。自宅でご遺体を安置できるかどうかについては、次のことをチェックしてみましょう。

  • ご遺体を安置できる個室があるかどうか
  • 冷房で涼しく保てるかどうか
  • 搬送するための導線が確保できるかどうか

とくに集合住宅の場合には、階段やエレベーターを使う上階では、ご遺体を搬送できる経路があるかが問題になります。マンションやアパートの自宅にご遺体の安置を検討している場合には、事前に管理人や管理会社に確認しておきましょう。

自宅でご遺体を安置する際は、個室が最も適しています。エアコンを常時かけ、部屋の温度を20度以下に保つため、同居者の生活空間だと寒く生活に支障が出るためです。ご遺体を安全に保つために、夏は冷房を使って涼しく、冬は暖房を入れずにそれぞれ20度以下になるよう部屋の温度を保つことが大切です。そのうえで、ご遺体のまわりにはドライアイスを置いて保冷します。ドライアイスは毎日取り換える必要があるため、葬儀社に手配します。

安置施設を利用する場合

自宅にご遺体を安置できない場合には、安置施設の利用を検討しましょう。安置施設は専用の施設なので、ご遺体の安置に適しています。ただし、自宅とは違い、利用日数が増えるとその分費用がかかる点に注意しましょう。

安置施設とは?

安置施設とは、葬儀社や民間業者が所有するご遺体専用の安置所です。現在は住宅事情や衛生面から、自宅よりも安置施設を選ぶ方も増えています。

ご遺体を安置するための施設なので、設備が充実していて搬送もしやすくなっています。安置の準備やドライアイスの交換も、衛生面を考慮しながらプロが行うので、安心感があります。

安置施設はどんな場所か

安置施設は、施設によって設備や環境が大きく異なります。ご遺体が安全に保つために部屋が冷蔵状態になっているところや、常温なので自宅と同じようにドライアイスが必須のところもあります。

葬儀社が保有している安置施設の場合、葬儀会場と同じ建物内にあることも多く、搬送回数が少なくて済むのがメリットです。また、ご家族が宿泊できるようになっていて、最期の時間を一緒に過ごせる施設もあります。

ご遺体安置までの流れ

ご逝去後ご遺体は病院や警察署などの霊安室に安置されますが、数時間のうちに出ていかなければならないことが多いです。この間にご家族は葬儀社と安置先を決め、葬儀社に電話してご遺体搬送の手配をします。葬儀社は24時間365日電話を受け付けているので、夜間や早朝でも構わず連絡しましょう。

安置先に到着すると、葬儀社のスタッフによって安全に保つためのケアをされ、枕飾りを施します。安置に必要なドライアイスや防水シート、枕飾りなどはすべて葬儀社が準備するのが一般的です。

ご遺体安置の期間

ドライアイスでの保冷の場合、ご遺体を安置できる明確な日数はありませんが、環境が整っていれば一週間前後お休みいただくことも可能です。ただ、ご遺体に全く変化がないわけではないため、ご自宅で安置する場合はご自宅で納棺をし、より安全な保冷環境にしたり、ご逝去から葬儀まで数日は自宅、その後は安置施設を利用する、などの併用も可能です。

ご遺体安置の費用

ご遺体安置にかかる費用は、使用するドライアイスの量や安置施設の使用料によって決まります。費用の相場としては、次の通りです。

  • ドライアイスの費用:約1~2万円(1日当たり)
  • 安置施設の使用料:約5,000円~3万円(1日当たり)

ドライアイスや施設の使用料は1日ごとに加算されるため、ご遺体を安置する日数が増えれば増えるほど、費用は高くなります。

このほかにも、ご遺体の搬送回数が増えれば、その分搬送料金がかかります。搬送料金は距離に応じて上がるのが一般的なので、遠方の安置場所を使用するときは注意しましょう。

ご遺体安置の注意点

ご遺体を安置するときに、注意したいポイントがあります。知らなかった、聞いてなかった、とならないように事前にしっかり確認が必要です。

面会の注意点

安置施設を使用する際は、自宅とは異なり、ご家族が24時間自由にご遺体と対面できるわけではありません。 施設によっては、面会ができなかったり、面会時間に制限があったりします

反対に、ご家族がずっと付き添いできるように、宿泊施設を備えているご遺体安置所もあります。宿泊施設があると、遠方から駆けつけたご家族も集まることができて便利でしょう。

宗教ごとの注意点

ご遺体を安置する際は、宗教ごとにしきたりが異なります。仏教・神式・キリスト教の3宗教の、ご遺体を寝かせる方角や「枕飾り」という枕元に置くお供えは、以下の通りです。

仏教

ご遺体には枕を使わず、北枕か西枕にします。薄い敷布団に寝かせ、掛け布団は上下逆にしてかけます。枕飾りには、白木の台に香炉・燭台・花立・枕飯・枕団子・水を入れた湯呑み・仏具のお鈴を置きます。

神式

ご遺体は西枕か東枕にします。枕飾りとして、小さな台に榊・水・塩・洗米をお供えします。

キリスト教

ご遺体は北枕で寝かせます。仏教や神式とは異なり、枕飾りは準備しません。枕飾りの代わりに、白い布をかけたテーブルの上に、十字架・ろうそく・聖書・生花を置きます。

ご遺体安置先に迷われたら

ご遺体を安置することは葬儀社を決めることよりも先に判断が必要になります。葬儀社がまだ決まっていない、という方でも万が一の際、自宅でご安置するのかご安置施設を利用されるか決めておくと気持ちに余裕が生まれます。もし迷われる際は、まずは一度ご自宅に帰してあげる、帰ってゆっくり過ごされる、というお気持ちを優先した選択をされてはいかがでしょうか

喪主経験者の中には葬儀後に一度自宅に帰してあげたかった、という声もあります。また、物理的に自宅で安置することが難しい、という方にも、一度搬送中に自宅を経由して、安置施設に向かう、という搬送料金はかかりますが遠回りして安置施設へ向かうことも可能です。