真言宗の葬儀

日本では仏教式の葬儀が一般的ですが、細かいマナーは宗派によって異なります。このため、葬儀を執り行ったり参列したりする際は、宗派の作法やマナーを知っておく必要があります。そこで、今回は真言宗の葬儀について、作法やマナーをご紹介します。

真言宗とは

真言宗は平安時代に空海によって開かれた宗派です。真言宗は「密教」と呼ばれる秘密の教えの基盤になっています。真言宗では、修行や祈祷によって大日如来(だいにちにょらい)の存在を感じ、仏として一体になることを目指します。自分の修行や経験によって悟りを開くので、真言宗の考えは「自力本願」と呼ばれます

真言宗の葬儀の特徴

真言宗の葬儀は、ほかの宗派と比較すると独特です。特徴的なのは、「灌頂(かんじょう)」「土砂加持(どしゃかじ)」と呼ばれる儀式です。

灌頂は、故人の頭に水をそそぐ儀式。水をそそぐことで、仏の位まで上ることができるとされています。土砂加持とは、洗い清めた土砂を火で焚き、光明真言を本尊の前で唱えたあと、遺体に土砂をかけて納棺する儀式です。土砂をかけることで苦悩を取り除き、体が柔軟になるとされています。

真言宗の葬儀の流れ

真言宗の葬儀の流れは次の通りです。

  1. 僧侶の入場
  2. 真言宗の葬儀の準備
  3. 塗香(ずこう):故人の体に香を塗って穢れを取り除く
  4. 三密観(さんみつかん):故人を即身成仏させるために三業を清める儀式
  5. 護身法(ごしんぼう):5種類の印を結ぶことで心と体を整える儀式
  6. 加持香水(かじこうずい):穢れや煩悩を取り除くために、祈りで浄化された香水を故人の体にかける儀式
  7. 三礼(さんらい)・表白(ひょうびゃく)・神分(じんぶん):真言宗特有の祈願をし、仏法僧や大日如来へ感謝をします。
  8. 声明(しょうみょう):仏典に節をつけた仏教音楽を僧侶が唱えます。
  9. 授戒作法(じゅかいさほう):故人が仏の弟子になるために、僧侶はカミソリで故人の髪の毛を剃ります。
  10. 引導の儀式:故人に自分の死を認識させて、あの世に送り出す儀式を行います。灌頂という、故人の頭に水をそそぐ作法は、引導の儀式のなかで行われるものです。
  11. 墓前作法:読経により故人の煩悩を取り除き、法具や血脈(けちみゃく)の授与を行います。
  12. 焼香:僧侶が諷誦文(ふじゅもん)を唱える間に焼香を行います。
  13. 出棺:僧侶が導師最極秘印(どうしさいごくひいん)という印を結んだあと、指を3回鳴らして出棺します。

真言宗の葬儀のマナー

真言宗の葬儀のマナーは、他の宗派と異なる点があります。葬儀に参列する前に知っておきたい焼香作法やお香典、喪主になるなら気になるお布施について解説します。

真言宗の焼香作法について

真言宗では、焼香を3回行うのが基本です。お香を額までささげ、香炉に落とすという作法を3回繰り返しましょう。また、線香を手向けるときも3本立てるのがマナーとなっています。参列者の人数が多い場合など、焼香が1回と決められている葬儀もあるので、指示に従いましょう。

真言宗のお布施について

真言宗の葬儀でのお布施は、約50~100万円が相場とされています。しかし、地域や戒名の位によってお布施で包むべき金額は大きく変わってきます。とくに戒名の位による金額の幅は大きいので、戒名を授けてもらう前に慎重に検討したほうがよいでしょう。

真言宗のお香典について

真言宗のお香典についてのマナーは、仏式のほかの宗派と違いがありません。表書きが「御香典」もしくは「御霊前」の不祝儀袋を用います。表書きの下に薄墨の筆ペンで氏名をフルネームで書きましょう。お香典の相場は、友人であれば5,000~1万円、職場の関係者であれば約5,000円、親族であれば1~10万円ほどです。

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