浄土宗の葬儀
更新日: 2023/10/13
浄土宗は大乗仏教の宗派のひとつ。仏教にはさまざまな宗派があり、宗派ごとに各種儀式において決められた作法やマナーがあります。同じ仏式の葬儀でも宗派によって執り行われ方が異なるため、宗派ごとのマナーを把握しておくことが大事。ここでは浄土宗の葬儀について徹底調査。浄土宗の特徴や葬儀に関するお役立ち情報を紹介しています。
浄土宗とは
平安時代の末期に法然上人が開祖し、2024年に開宗850年を迎える仏教宗派。京都にある知恩院を総本山とし、全国に7つの大本山があります。
阿弥陀如来を本尊としており、阿弥陀仏の救いを信じ「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えることで心と身体が清らかになり、極楽浄土に往生(念仏の功徳により臨終時に阿弥陀仏の来迎に預かり極楽浄土に生まれること)ができ、生前に縁のあった人とも往生していれば浄土で会えるという専修念仏(せんじゅねんぶつ)という教えが特徴です。
浄土宗の葬儀の特徴
浄土宗の葬儀では2つの特徴的な儀式があります。1つ目は僧侶と参列者一同で故人に代わり「南無阿弥陀仏 」と10回以上の念仏を一定時間唱える「念仏一会(ねんぶついちえ)」という儀式で、故人が阿弥陀如来の救いを得る助けをする目的で行われているもの。
2つ目は僧侶による「下炬引導(あこいんどう)」という儀式で、火葬の際に松明で点火する様子を2本の法具や線香を使って表し、現世と決別し仏門に入る宣言と極楽浄土へと導く引導の意味が込められています。
浄土宗と浄土真宗の違い
浄土宗と浄土真宗は、共に信仰の対象とする本尊を阿弥陀如来として特に重要な仏としていますが、いくつか相違する点があります。
開祖
- 浄土宗:法然
- 浄土真宗:親鸞(法然の弟子)
時代
- 浄土宗:平安時代末期
- 浄土真宗:鎌倉時代初期
本山
- 浄土宗:知恩院(京都)
- 浄土真宗:西本願寺(京都)
教え
- 浄土宗:専修念仏を大切にし、とにかく念仏を唱えることに重きを置いている。
- 浄土真宗:絶対他力(阿弥陀如来に任せること)の思想によって、阿弥陀如来への信心を重んじている。
葬儀
- 浄土宗:死者は極楽浄土へ往生した後に修行をして悟りを開くため、授戒・引導の儀式がある。
- 浄土真宗:死者はすぐに極楽浄土に導かれるため、授戒・引導の儀式がない。
浄土宗の葬儀の流れ
浄土宗の葬儀では告別式が「序分(じょぶん)」、「正宗分(しょうしゅう(じゅう)ぶん」、「流通分(るつうぶん)」の3つの儀式で構成されています。
通夜
故人を北枕にして横にします。顔に白い布を被せ、胸元に守り刀を置きます。通夜の間、ろうそくと線香の火を絶やさぬようにします。
葬儀式( 授戒の儀式 )
- 奉請(ぶじょう):仏の入場を願う
- 懺悔:仏に故人の生前の罪の赦しを請う
- 剃度作法(ていどさほう):生死の苦海を渡り彼岸に至るため頭を剃る仕草をする
- 十念:遺族や参列者で十念(南無阿弥陀仏と10回唱える作法)を唱える
- 三帰三竟(さんきさんきょう):仏・法・僧に帰依することを故人に伝える
- 授与戒名:僧侶より戒名が授けられます
- 開経偈(かいきょうげ)・誦経(ずきょう)・発願文(ほつがんもん)・摂益文(しゅうやくもん):念仏を唱え仏の教えを説く儀式
- 念仏一会(ねんぶついちえ):僧侶と参列者で念仏を唱える
- 回向(えこう):念仏を唱え、極楽浄土への往生を願う
序文
通常の法要に当たる部分で、仏を堂内にお迎えし讃歎する儀式
正宗分
葬儀の中心部分で、下炬引導や焼香などを行う
流通分
阿弥陀仏への帰依を誓い、仏様と故人を極楽浄土へと送り出す儀式
出棺・火葬
祭壇に飾ってある花などを棺に入れ、 出棺の儀の後に火葬が執り行われる
浄土宗の葬儀のマナー
浄土宗では二連の数珠を使用します。数珠の音をたてる、床にじかに置くといった行為はマナー違反となるので要注意。葬儀の際は、左手の手首にかけておきましょう。服装は、遺族は正式礼装の喪服。参列者は洋装の場合は礼服で問題ありません。
浄土宗の焼香作法について
地域や寺院によって多少違いはありますが、焼香回数は1~3回が基本。香炉の前で合掌と一礼をし、中指と人差し指、親指で香をつまんだら手を上に向けます。そして、香を持った手にもう片方の手を下から添えてから額に寄せて香炉の灰の中に入れ、最期に合掌と一礼をします。お線香は1本だけ火をつけ、香炉の真ん中に立てます。
浄土宗のお布施について
お布施は遺族のお礼の気持ちなので明確な金額は決まっていません。金額は地域や戒名の位、葬儀の規模などによって変わるため、聞き方に配慮する必要はありますが、あらかじめ確認しておくことが大切です。また、お布施以外にも僧侶の「お車代」や法要後の会食に僧侶が参加できない時にお渡しする 「御膳代」を用意しておくと安心です。
浄土宗のお香典について
浄土宗もお香典の書き方や包む金額は一般仏式と同じです。遺族にお渡しする香典の不祝儀袋の表書きは「御霊前」や「御香典」とし、法事の時は「御仏前」と記載します。香典の金額は、故人との関係性によって変わりますが、目安として5千円~3万円程度となっています。通夜と告別式の両方に参列する場合は、通夜の際に持参しましょう。
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