日蓮宗の葬儀

日本では仏教式の葬儀が一般的ですが、細かいマナーは宗派によって異なります。このため、葬儀を執り行ったり参列したりする際は、宗派の作法やマナーを知っておく必要があります。そこで、今回は日蓮宗の葬儀について、作法やマナーをご紹介します。

日蓮宗とは

日蓮宗とは、13世紀に日蓮によって開かれた宗派です。日蓮はお釈迦様が晩年に説いた「法華経」をよりどころにして、信仰を進めていきます。法華経は「仏を信じると、どんな人でも仏から手を差し伸べてもらえる」という教えで、当時災害や戦で困難にあった民衆たちに強く支持され、広まっていきました。

日蓮宗の題目である「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」を唱えると、自分のなかにある仏心が目覚めると信じられています。日蓮宗は現世の幸せに重きを置く宗派です。

日蓮宗の葬儀の特徴

日蓮宗の葬儀の特徴として挙げられるのが、題目である「南無妙法蓮華経」を参列者全員で唱えることです。それほど日蓮宗にとって題目は大切なものだといえます。死装束にもご本尊や題目が書かれるのが一般的です。また、日蓮宗の葬儀では故人を霊山浄土に正しく導くために、妙鉢(みょうばち)や木鉦(もくしょう)といった鳴り物をよく使います。

日蓮宗と日蓮正宗の違い

日蓮宗と似ている宗派に日蓮正宗があります。日蓮正宗は、日蓮聖人の教えを大切にしている宗派です。もともとは同じ日蓮宗でしたが、日蓮聖人が亡くなったあとに弟子たちが思想の違いで分かれ、2つの宗派になりました。2つの宗派の違いはさまざまあり、日蓮宗の本仏はお釈迦様ですが、日蓮正宗では日蓮聖人です。

日蓮宗の葬儀の流れ

日蓮宗の葬儀の流れは次の通りで、およそ2時間で葬儀は終わります。

  1. 開会の辞
  2. 総礼(そうらい):僧侶と参列者が合掌し、「南無妙法蓮華経」を3回唱えます。
  3. 道場偈(どうじょうげ):仏を招くために「道場偈」を流します。
  4. 三宝礼(さんぽうらい):3つの宝である「仏」「法」「僧」を敬い、立ったり座ったりする起居礼(きこらい)で礼拝します。
  5. 勧請(かんじょう):本仏や日蓮聖人を招く儀式を行います。
  6. 開経偈(かいきょうげ):読経の前に、法華経の公徳をたたえて教義の真義の会得を祈願します。
  7. 読経:僧侶が法華経の重要な諸品を読んで、教えを説きます。
  8. 開棺:僧侶が焼香をして棺の前に進み、中啓(ちゅうけい)と呼ばれる扇子のようなもので、棺のふたを3回打ち鳴らします。お膳やお供え物を祭壇に捧げます。
  9. 引導:僧侶が霊前に進み、払子(ほっす)を3回振り、焼香をして引導文を読み上げます。
  10. 焼香:参列者が焼香をします。
  11. 祖訓(そくん):日蓮聖人の言葉を拝読します。
  12. 唱題(しょうだい):題目を唱えながら焼香します。
  13. 宝塔偈(ほうとうげ):法華経の功徳をたたえます。
  14. 回向(えこう):故人の成仏を祈ります。
  15. 四誓(しせい):すべての生き物を救う、4つの誓いの言葉を唱えます。
  16. 三帰(さんき):三宝に帰依して仏道に精進することを誓います。
  17. 奉送(ぶそう):葬儀にお招きしていた仏たちをお送りする声明を流します。
  18. 閉式の辞

日蓮宗の葬儀のマナー

日蓮宗の葬儀のマナーは、ほかの宗派と異なる点があります。参列する際に気になる焼香作法やお香典、わからないことの多いお布施について解説します。

日蓮宗の焼香作法について

日蓮宗では焼香を3回行うのが基本です。しかし、一般の参列者は1~3回行えばよいので、それほど気にする必要はありません。 僧侶による読経が終わると、「南無妙法蓮華経」を唱えるので、その間に参列者は焼香を行います。線香を立てる形式の焼香では、1本もしくは3本の線香を立てます

日蓮宗のお布施について

日蓮宗のお布施は、基本的に1回につき5万円といわれています。しかし、地域や寺院、法名によっては包む金額が異なるので、注意しましょう。法名とはほかの宗派でいうところの戒名のことです。位の高い法名をいただくと、金額が高くなります。法名の位はほかの宗派よりも細かいので、事前に確認しましょう。

日蓮宗のお香典について

日蓮宗の葬儀に参列するときに持参するお香典は、ほかの仏式の葬儀と同様です。お香典の表書きは「御霊前」もしくは「御香典」が一般的です。不祝儀用の水引の下に、薄墨でフルネームの氏名を書きましょう。 お香典の相場は、友人であれば5,000~1万円、職場の関係者であれば約5,000円、親族であれば1~10万円ほどです。

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