樹木葬とは

比較的新しい埋葬方法として、注目を集めている「樹木葬」。樹木葬は、家族や親族に負担をかけたくない人や、無宗教の人から好まれています。樹木葬にはどのような特徴があり、どのように遺骨を埋葬するのでしょうか。

ここでは、樹木葬に関する基礎知識、樹木葬の形態（種類）、埋葬方法、メリット・デメリット、樹木葬の流れについてご紹介します。

樹木葬とは

樹木葬とは、墓標の代わりに樹木や花草を用いた納骨方法のこと。「樹木葬」と言っても、寺院や霊園の場所によって特徴が違います。自然が豊かな郊外にある「里山型」、公園のようにベンチなどの設備がある「公園型」、ガーデンのような見た目で都市部に設置された「庭園型」に分けられます。

また、納骨方法は、「合祀埋葬」「個別埋葬」「家族埋葬」の3種類です。合祀埋葬（ごうしまいそう）は、他人の遺骨と混ぜて納骨するのに対して、個別埋葬と家族埋葬は自分の区画を用意して納骨するのが特徴。費用は、合祀埋葬が最も安価で、個別埋葬と家族埋葬は、納骨人数によって金額が変わります。

樹木葬の歴史・背景

樹木葬は、比較的新しい埋葬方法で、1999年に岩手県の祥雲寺(現：知勝院)で始められました。2006年には公営の樹木葬として、神奈川県横浜市に「横浜市営メモリアルグリーン」が誕生。都市部は人口増加に伴い墓地が不足している問題を抱えており、樹木葬が注目されるようになりました。2012年には、都立の樹木墓地も運営開始。

近年、樹木葬ができる施設は増え続けており、遺骨が土に還るような本来の姿に近い樹木墓地の設置を希望する人が多いです。

樹木葬の特徴

シンボルツリーとして、桜やハナミズキなどが選ばれることが多く、樹木の根元に遺骨を埋葬します。樹木だけではなく、草花を墓標とするガーデン風の樹木葬もあります。 樹木葬は、墓石を建立しないため、お墓に納骨するより費用が抑えられるのが利点です。しかし、樹木葬は納骨する人数によって金額が変わる特徴があり、人数が多いときはお墓の方が安くなることもあります。

永代供養を基本としている樹木葬。樹木の管理は寺院や霊園がしてくれるため、墓守などの継承者が必要ありません。そのため、お墓を管理する人がいないときや、家族や親族の負担を軽減したい人に好まれます。代々引き継ぐような形式は取っておらず、個人やご夫婦のみで樹木葬を利用するケースが多いです。

信仰心が希薄となり無宗教の人も増えてきていますが、樹木葬は宗教や宗派、宗旨による制限がない場合がほとんどです。そのため、故人に菩提寺が無いときや無宗教だったときに、樹木葬はおすすめの埋葬方法と言えるでしょう。

樹木葬の形態（種類）

樹木葬は、「里山型」「公園型」「庭園型」に分けられます。それぞれ樹木が設置されている場所が違い、自然が豊かな樹木葬や、アクセスが良好な樹木葬などそれぞれに特徴があります。ここでは、樹木葬の形態（種類）について、ご紹介します。

里山型樹木葬

「里山型樹木葬」とは、自然に恵まれている山林に、遺骨を埋葬する樹木葬のこと。山林に遺骨を埋葬するため、アクセスはやや大変になりますが、遺骨が土に還るという自然の姿に最も近い樹木葬でしょう。

シンボルツリーは、新たに植えるケースと、自然の樹木を活かしてもともと生えている木をシンボルツリーにするケースがあります。自然豊かな樹木葬である里山型樹木葬ですが、公共交通機関でたどり着けないときは、お墓参りのために車の運転が必須となります。

公園型樹木葬

トイレやベンチが用意されていて、公園のような環境の整備がされている、寺院や霊園に納骨する「公園型樹木葬」。里山型樹木葬のような本来の自然ではなく、寺院や霊園の中に公園のような自然を人工的に再現しているのが特徴。

比較的アクセスが良好な場所に設置されていることが多く、公園に散歩に行くような感覚で、お墓参りに行けるところが公園型樹木葬の魅力です。しかし、人工的に造り上げられた設備のため、里山型樹木葬とくらべると、自然に還る印象は薄いかもしれません。

庭園型樹木葬

「庭園型樹木葬」は、都市型樹木葬とも呼ばれ、寺院や霊園の中に植えられているシンボルツリーの根元に遺骨を埋葬する方法。規模が小さい場合が多いですが、その分手入れが行き届きやすく、庭園やガーデニングのような整備された美しい見た目です。

庭園型樹木葬は、都市部に設置されているため、アクセスが良好で家族や親族がお墓参りしやすいのが特徴。施設によっては、故人の名前を刻んだプレートを設置できるところもあります。

埋葬方法

樹木葬には3パターンの埋葬方法があり、「合祀埋葬」「個別埋葬」「家族埋葬」に分類。他人の遺骨と一緒に埋葬したり、個人で埋葬したりなどの違いがあります。ここでは、それぞれの埋葬方法の特徴をご紹介します。

合祀埋葬

合祀埋葬（ごうしまいそう）とは、大きなエリアに他人の遺骨と故人の遺骨を合わせて埋葬する方法。遺骨を骨壺から出して完全に混ぜてしまうときと、布袋に入れてから埋葬するときがあります。

費用は最も抑えられる埋葬方法ですが、他人の遺骨と混ざるため納骨後に取り出すことはできません。また、遺骨が混ざることに抵抗がある人もいるでしょう。

個別埋葬

個別埋葬は、自分専用の区画に遺骨を埋葬する方法。他人の遺骨と混ざる心配がなく、自分の区画を持てることから、合祀埋葬よりも納骨した実感が得られるかもしれません。

骨壺のまま納骨するときがあり、樹木葬の魅力である自然に還るようなイメージとは違う可能性があるので、契約前の確認が必要です。また、場所が限られているため、粉骨が必要なときもあります。

家族埋葬

家族や友人と区画を購入して、複数人の遺骨を埋葬する「家族埋葬」。樹木葬は区画が限られているため、基本的には個人やご夫婦単位での遺骨埋葬が多いですが、施設を選べば家族での遺骨埋葬も可能です。

しかし、初回の契約時に一緒に納骨したい人の情報を伝えなければならない施設もあり、後からは変更できないときもあるので注意しましょう。

樹木葬にかかる費用

樹木葬は、お墓を建立するより安いイメージがありますが、どのくらい費用が違うのでしょうか。樹木葬に必要な費用の内訳は、「使用料」「埋葬料」「プレート代・彫刻料」「管理料」です。ここでは、樹木葬の費用内訳についてご紹介します。

樹木葬の費用相場はこちらでまとめてますので参考にしてください

使用料

「使用料」とは、遺骨を埋葬するための、区画や土地に関する費用です。埋葬方法で費用が違い、最も費用が抑えられるのは、合祀埋葬。個別埋葬や家族埋葬は、区画に遺骨を埋葬する人数が増えるほど費用が大きくなっていきます。

埋葬料

「埋葬料」とは、遺骨を埋葬するために必要な費用です。契約によっては、使用料に埋葬料が含まれているときもあります。家族埋葬のように複数人で区画を利用するときは、遺骨を埋葬するたびにかかる費用のため、予算が決まっているときは人数分の計算をしましょう。

プレート代・彫刻料

故人の名前や戒名、享年や没年月日などを彫刻したプレートを、設置するための費用である「プレート代・彫刻料」。墓標の代わりとしてシンボルツリーのみのケースも多いですが、庭園型樹木葬などではオプションとして埋葬した場所にプレートの設置も可能です。

管理料

「管理料」とは、寺院や霊園の管理や運営に必要な費用のこと。管理料は、使用料に含まれていることが多く、契約時以降の費用負担が無いところが樹木葬の特徴です。しかし、生前に樹木葬の契約をしたときは、お亡くなりになって納骨されるまで管理料を求められるときもあります。

メリット

樹木葬は、お墓のような管理が不要で、家族や親族の負担が軽減できる点が魅力です。シンボルツリーが植えられている寺院や霊園が、掃除や樹木のメンテナンスをしてくれます。また、寺院や霊園のスタッフによる供養を継続してくれるのも、樹木葬の特徴のひとつです。

宗教の信仰心が薄まってきており、無宗教の人も増えてきています。納骨は菩提寺が運営しているお墓に行なうのが基本ですが、樹木葬であれば、宗教・宗旨・宗派を問われないことが多く、納骨の敷居が低くなっています。

費用も墓石を建立するよりも安くなることが多く、特に合祀埋葬を選ぶと1人10万円程度で済ませられる施設もあります。菩提寺が管理するお墓に納骨したいときは、檀家として年会費などの費用負担を求められるときもありますが、檀家にならない樹木葬を選んだときは継続的な費用が不要です。 新しい納骨方法として、遺骨をパウダー状にして海などに散骨する方法もありますが、樹木葬だとシンボルツリーがあるため手を合わせやすいのも特徴でしょう。

デメリット

樹木葬の場合は、一度納骨してしまうと、後から取り出せないことがあります。特に、合祀埋葬の場合は、他人の遺骨と混ざってしまうため、遺骨を取り出すのは難しいです。そのため、後からお墓を建立したくなっても、改葬（お墓のお引越し）はできません。

個別埋葬や家族埋葬を選んで自分の区画を用意しても、期間が決められている契約がほとんどで、契約期間が終了すると合祀埋葬となることが多いです。契約後の期間延長は、認めていないケースもあるため、お墓のように代々承継していくことはできません。

宗教によるしがらみが無いところが魅力の樹木葬ですが、樹木葬は比較的新しい納骨方法のため、家族や親族から反対されるときもあるようです。お墓のように代々引き継ぐ形ではないため、従来のような墓守をしたい子どもがお墓を希望するときもあります。

樹木葬について失敗しないための情報はこちらでまとめてますので参考にしてください

樹木葬の申込から埋葬までの流れ

樹木葬の申込から埋葬までの流れは、基本的にお墓を建立するときと変わりません。しかし、墓石を用意する必要がないため、墓石の契約・作成期間は不要です。ここでは、樹木葬の申込と埋葬の流れについてご紹介します。

申込の流れ

樹木葬は、生前に終活のひとつとして、自ら契約できます。そのため、自分が気に入った場所に、納骨してもらえるのが特徴でしょう。 まずは、樹木葬を行なっている寺院や霊園を探します。ネットでの検索に加えて、葬儀会社や墓石を扱う石材店などに問い合わせてみるといいでしょう。 次に、場所や交通アクセス、価格、こだわりの条件などの希望が合うところに見学に行きましょう。事前予約が必要な場合もあるので必ず確認しましょう。

その後、樹木葬の契約を行ないます。費用の支払いが完了したら、使用許可証がもらえるため、納骨のときまで保管が必要です。 公立の樹木葬のときは、公式サイトなどで公示されている、利用希望者の募集に応募。該当地域に一定期間住んでいることなど、申し込みに条件があるので注意しましょう。利用できるかは、抽選によって決められます。

埋葬の流れ

残念ながら契約者がお亡くなりになったときは、死亡届を役所に提出します。その際に受け取った火葬許可証を火葬場に提出し、ご遺体を火葬します。ご遺体の火葬が終了したら、埋葬許可証が発行されますが、樹木葬のときも埋葬許可証の提出が必要です。

遺骨の埋葬の日程を決めたら、家族や親族が寺院や霊園まで遺骨を持参します。事前に遺骨をパウダー状にしておくなど、条件があるケースもみられるため、当日までに準備しておきましょう。 お墓から樹木葬への改葬（お墓のお引越し）をしたいときは、改葬許可証が必要になるため用意します。 樹木葬は、自治体による許可が必要で、たとえ私有地であっても勝手に埋葬してはいけません。あくまで、樹木葬は墓石の代わりに樹木を利用した「お墓」なのです。