遺体を飛行機で搬送する際の費用・手続きは?
更新日: 2023/10/13
不慮の事故や急な病気で、遠方でお亡くなりになる人がいます。一般的には陸路でご遺体を搬送しますが、遠方でお亡くなりになった場合、ご遺体を飛行機で搬送するケースがあります。特に、海外で亡くなったときは、飛行機でご遺体を搬送することが多いです。
飛行機でご遺体を搬送するときは、陸路での搬送とは違う手続きが必要で、葬儀代に加えて搬送費用もかかります。今回は、ご遺体を飛行機で搬送する際の費用・手続きについてまとめました。
飛行機での遺体搬送が行われるケース
飛行機で遺体搬送を行なうケースには、2パターン考えられます。
一つ目は、距離が遠いため、陸路で遺体搬送をするのが難しいケース。特に、海外からの遺体搬送は、飛行機が向いているでしょう。国内では、北海道と沖縄を除いて陸路での遺体搬送が可能ですが、移動時間がとても長くなります。
二つ目は、陸路だと飛行機よりも費用が高額になるケース。陸路やフェリーでの長距離移動は、燃料代や高速代がかさみます。さらに、移動時間が長くなると帯同する人への人件費も高額になるため、飛行機の方が安くなるときがあります。
ご遺体を飛行機で搬送する場合の費用
飛行機を使った遺体搬送には、どのくらい費用がかかるのでしょうか。陸路の方が費用を抑えられるイメージですが、条件によっては飛行機の方が安い場合もあります。ここでは、国内・国外に分けて、ご遺体を飛行機で搬送する場合の費用をご紹介します。
国内でご遺体搬送の場合費用
ご遺体を飛行機で搬送するときの相場は、約20~35万円と言われています。残念ですが、ご遺体は貨物として扱われ、貨物室で搬送されます。
ご遺体の搬送代に含まれるのは、空港までの移動費やご遺体の安置代、シーツ代、ドライアイス代、空輸代、人件費などです。ご遺体をきれいにする湯灌(ゆかん)、化粧や服の着せ替えを行なう納棺などの費用は、オプションの場合があるため注意しましょう。
大きい棺を使ったり、重さが100kgを超えたりすると、基本的な搬送代と別に追加料金が必要です。
ご遺体の搬送を飛行機で行なうか、陸路で行なうか迷う場合もありますよね。陸路の場合は、距離に応じて料金設定がされているため、距離が長くなるほど費用が高くなります。
条件にもよりますが、移動距離が「500km」よりも長いときは、飛行機の方が費用を抑えられる傾向です。
国外からのご遺体搬送の場合の費用
飛行機を使って海外からご遺体を搬送する場合は、約100~150万円かかります。
出国先によりますが、主な内訳は航空運賃が、約20~50万円。航空機用の棺や棺の解体、ご遺体の安置、寝台車、人件費などは、約50~70万円。(人件費には、手続きの代行業務も含まれます。)
海外からのご遺体搬送時には、エンバーミング(ご遺体の腐敗を防ぐための処置のこと)が必要です。処置する国によりますが、エンバーミング費用は、約20~30万円。また、現地の空港までの搬送料が別途かかるときもあります。
ご遺体の搬送だけではなく、海外で亡くなった場合はご遺体の確認が必要なため、遺族が現地に向かわなければなりません。そのため、遺族の渡航費も必要になります。
エンバーミングについて
エンバーミングは、遺体の自然な腐敗を遅らせ、感染病のリスクを最小限に抑えるためのものです。これは、遺体が長時間にわたって適切な温度で保存されない場合は特に必要ですし、特定の国では法律でエンバーミングが必須とされていることもあります。
エンバーミングは、専門的な技術と知識を必要とするため、適切な訓練を受けた専門家が行います。遺体はまず清潔に洗浄され、その後、防腐剤が血管を通じて体内に注入されます。これにより、遺体は長期間安定して保存され、輸送の準備が整います。
遺体を空輸するときの流れ
飛行機を使ってご遺体を搬送するときは、葬儀場の手配の他にどんな準備が必要なのでしょうか。ご遺体空輸の手順については、あまり認知されていないかもしれません。ここでは、ご遺体を空輸するときの流れを、国内からの空輸と国外からの空輸に分けてご紹介します。
国内で遺体を空輸するときの流れ
飛行機を使って国内でご遺体を搬送したいときは、まず葬儀会社に搬送を依頼します。その後、ご遺体と同じ便を利用するか、到着先の葬儀会社はどこにするかなどを決定。書類を揃えて葬儀会社を通して手続きを済ませたら、搬送費用を支払います。最後に納棺を済ませたら、ご遺体搬送の開始です。
葬儀会社への連絡では、故人の名前、年齢を伝えます。また、棺の大きさや重さで搬送費用が変わるため、身長や体重も伝えられるといいでしょう。
ご遺体を空輸するときは、死亡診断書や死亡届が必要です。死亡届は、本籍地か故人がなくなった場所、もしくは故人が住んでいた場所の役所・役場に提出します。提出期限は7日以内ですが、葬儀やご遺体の搬送手続きに死亡届が必要なため、できるだけ早く提出しましょう。死亡届を提出すると、火葬に必要な火葬許可証の交付を受けられます。死亡届の用紙は、死亡診断書に添付されていることが多いですが、役所・役場でももらえます。
国外で遺体を空輸するときの流れ
国外からご遺体を搬送するときは、国によって手順が違うため、日本大使館や日本領事館との連携が大切になります。ご家族が海外で亡くなられたときは、現地警察が日本大使館・領事館に連絡。日本大使館・領事館から情報を受け取った日本の外務省が、ご遺族に連絡します。
遺族は、連絡が来たらすぐに現地へ向かいましょう。パスポートを持っていない遺族もいるかもしれませんが、特例として数時間で発行が可能です。
現地に到着してご遺体を確認した後は、書類集めを始めます。必要な書類は、故人のパスポート、死亡診断書、遺体証明書、エンバーミング後に発行される防腐処理証明書、埋葬証明書、非感染症証明書、納棺証明書です。
書類を集めたら、葬儀会社と航空機の手続きを開始。現地の空港までご遺体を搬送するときは、領事館職員や葬儀会社スタッフに協力を仰ぎながら搬送します。
ご遺体の検査が済んだら、日本へご遺体の搬送開始です。日本に到着した後の葬儀会社の選定も済ませておきましょう。
ご遺体とともに移動されたい場合
空輸の際にご遺体とともに移動を希望される方は、まず航空会社に対してご遺体とともに移動を希望する旨を伝え、同行の手続きを進めていきます。
航空会社によっては、同行者のための特別なサービスやサポートを提供していることもあります。これには、専用の待合室の利用や、搭乗手続きの優先サービスなどが含まれることがあります。
諸外国から日本への搬送にかかる目安の時間
海外から日本への遺体搬送は、地域や手続きの進行状況により、所要時間が大きく異なることがあります。以下に、世界の主要都市からの遺体搬送にかかる目安の時間をご案内します。
- ロサンゼルス、アメリカ: 約2-4日
- ニューヨーク、アメリカ: 約3-5日
- ロンドン、イギリス: 約3-5日
- パリ、フランス: 約3-5日
- シドニー、オーストラリア: 約3-5日
- 北京、中国: 約2-3日
- デリー、インド: 約4-6日
これらの時間はあくまで目安であり、具体的な時間は航空便のスケジュール、必要な書類の準備状況、現地の法律や規制などにより変動します。なお、エンバーミングやその他の必要な手続きの時間も含まれています。
ヘリコプターやフェリーを利用した遺体の輸送方法
遺体の輸送には、航空機だけでなく、ヘリコプターやフェリーを利用する方法も存在します。これらの選択肢は、特定の地理的な制約や緊急性により、航空機を利用することが難しい場合に適しています。
ヘリコプターでの輸送は、遠隔地やアクセスが難しい場所からの輸送、または緊急時に有効です。ヘリコプターは直線的に移動でき、交通の混雑に影響されず、迅速に遺体を輸送することが可能です。ただし、ヘリコプターでの輸送はコストが高いため、必要性と費用のバランスを考慮する必要があります。
一方、フェリーでの輸送は、島から本土への移動や、海を隔てた地域間での輸送に適しています。フェリーは大量の荷物を一度に運ぶことができ、遺体を含む多くの荷物を一度に運ぶことが可能です。また、フェリーは比較的低コストで利用できるため、長距離の海上輸送に適しています。