秘密証書遺言とは?
更新日: 2023/10/26
遺言書とは、自分が亡くなったあとに、自分の財産や家族に対する意思を残す文書です。遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。
このうち、秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られずに残す遺言の方法です。
秘密証書遺言は、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。また、どのように作成するのでしょうか。このページでは、秘密証書遺言について詳しく解説します。
秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られずに残したい場合に有効な方法です。
遺言者は、遺言書に署名と押印をして封筒に入れ、公証人役場に持っていきます。公証人と証人2人の前で、遺言書の存在と筆者を申し述べますが、内容は見せません。公証人は、封筒に日付と遺言者の申述を記載し、署名と押印します。
その後、封印された遺言書は遺言者に返されます。遺言者が亡くなったら、家庭裁判所で検認手続きを行い、封印を解いて内容を確認します。
秘密証書遺言のメリット
秘密証書遺言のメリットは、以下のようなものがあります。
遺言内容を秘密にできる
秘密証書遺言は、遺言者が亡くなるまで、遺言の内容を秘密にしたまま公証人に遺言の存在を証明してもらえます。
公証人や証人も遺言の中身を見ません。
遺言者が自分の意思を誰にも知られずに残したい場合に有効な方法です。
パソコンや代筆でも作成できる
秘密証書遺言は、全文自筆が求められる自筆証書遺言と異なり、パソコンで作成することができます。また、代筆してもらうことも可能です。
ただし、署名と押印は自分で行う必要があります。
公証人への手数料が安い
秘密証書遺言の公証人への手数料は、一律11000円となっています。 これは、他の遺言方法と比べて安いです。
例えば、公正証書遺言の手数料は、遺言により相続させまたは遺贈する財産の価額に応じて変わります。
財産の価額が1000万円以下の場合でも、最低17000円の手数料がかかります。
秘密証書遺言のデメリット
秘密証書遺言のデメリットは、以下のようなものがあります。
公証人役場での手続きや証人が必要
秘密証書遺言の作成では、公証役場で遺言が本人のものであることを認証してもらう手続きが必要です。また、認証にあたっては証人が2名必要です。
遺言書が発見されないリスクがある
秘密証書遺言は公証役場で認証されますが、その後は自身で保管しなければなりません。
したがって、誰も保管場所を知らずに遺言書を見つけてもらえない恐れがあります。
遺言書が無効になる恐れがある
遺言の内容が不明瞭であったり記載方法に誤りがあったりすると、遺言書が無効になる恐れがあります。
秘密証書遺言は封をした状態で公証人に提出するため、公証人による内容の確認は行われません。内容や記載方法に誤りがあっても見つけてもらえないというデメリットがあります。
秘密証書遺言を作成の仕方
秘密証書遺言を作成する方法は、以下のような手順で行います。
- 遺言書は自筆またはパソコンで作成できます。ただし、署名と押印は必ず自分で行う必要があります。
- 遺言書を封筒に入れて、遺言で用いた印で封印します。
- 証人を2人用意して、公証役場に行きます。証人は遺言者と生活上のつきあいのない人が望ましいです。
- 公証人と証人の前で、封筒を提出し、自分の遺言であることと筆者の氏名と住所を述べます。
- 公証人が封筒に日付と遺言者の申述を記載し、公証人、証人、遺言者が署名押印します。
- 封印された遺言書を持ち帰り、自分で保管します。
秘密証書遺言と他の遺言方法との比較
秘密証書遺言は、内容を秘密にできるメリットがありますが、費用がかかったり、証人を用意したり、検認を受けたりする必要があります。
公正証書遺言は、公証人によって形式に則った遺言が作成されるため、内容に不備がなく、検認も不要です。ただし、内容は秘密にできず、費用も高くなります。
自筆証書遺言は、自分で手書きで作成するため、費用がかからず、内容も秘密にできます。ただし、内容に不備があると無効になったり、紛失や改ざんのリスクがあったりします。
秘密証書遺言を利用する場面
秘密証書遺言を利用する場面は、遺言の内容を秘密にしたいときです。例えば、相続人や親族との関係が悪く、遺言の内容が知られるとトラブルになる恐れがあるときや、自分の意思を他人に干渉されたくないときなどです。
秘密証書遺言に向いている人は、自分で遺言書を作成できる能力があり、かつ自分で保管できる環境がある人です。秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同様に、内容に不備があると無効になったり、紛失や改ざんのリスクがあったりします。そのため、自分で正確に作成し、安全に保管できる人でなければ、秘密証書遺言はおすすめできません。
まとめ
ここでは、秘密証書遺言について説明しました。秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にできる一方で、手続きが面倒で無効になるリスクが高いという特徴があります。
秘密証書遺言はあまり一般的ではなく、公正証書遺言や自筆証書遺言の方が安心できる方法だといえます。