自筆証書遺言の書き方
更新日: 2023/10/27
遺言書は相続に関して法的な効力を持つ重要な文書です。遺言書には3種類ありますが、今回は「自筆証書遺言」の書き方を取り上げます。
「自筆証書遺言」とは
「自筆証書遺言」とは執筆から署名・捺印まですべて自分ひとりで完結して作成できる遺言書のことです。「公正証書遺言」と「秘密証書遺言」を作成するためには、公証人が必要であるのに対し、自筆証書遺言には必要ありません。でも、自分で気軽に書けるからこそ、要件を満たしていないと無効になってしまう可能性が高い…
「自筆証書遺言を書く時の決まりって何?」「何から書けばいいんだろう」と悩んでいる方、大丈夫です。詳しく解説していきます。
自筆証書遺言の見本
ひな形については、以下を参照してみてください。
※参照元:法務局|自筆証書遺言書の様式
自筆証書遺言の5つのルール
それでは絶対に守らなくてはならない5点を詳しく見ていきましょう。
①全て自筆で書く
>タイトルの「遺言書」から署名まで全文自分で書きましょう。代筆やパソコンで書くことは認められていません。
ただし、財産目録は代筆でもパソコンで作成しても構いません。また通帳などのコピーも認められています。
②作成した日付を記す
日付は正確に記載します。「令和5年1月吉日」などの省略した表現は避け、「2023年1月1日」のように書きましょう。
③署名する
署名も忘れずに自分で行いましょう。もし忘れてしまうとせっかく書いた遺言書が無効となってしまいます。
④押印する
署名をしたら忘れずに押印しましょう。押印しないと、無効となります。
認印でも構いませんが、信用性を高めるためにも実印を使用することをお勧めします。
⑤訂正のルールを守る
遺言書の訂正の仕方は厳格に民法で定められています。少し複雑ですが、大丈夫です。順を追って説明していきます。
- 間違った部分を二重線で消し、正しい文言を吹き出しを使って書く
- 余白部分に「2字を削除、4字加入」などとどれだけ訂正したのかを書き、併せて署名する。
以下のサイトもあわせて参照してみてください。
※参照元:法務局|自筆証書遺言書の様式
自筆証書遺言の注意点7点
①まずは配偶者の住まいに関して明確にする
第1条には、配偶者への住まい(土地や建物)の相続について明記しましょう。
②誰に何を相続するのかを明記
「金融資産」などと不明瞭な書き方は避けましょう。預貯金について記載する際は、「金融機関名」「支店名」「口座の種類」や「口座番号」を特定して明記しましょう。
ただし、預金や株式は流動性が高いため、相続の際に必ずしも遺言書を作成した当時の数量が維持されていないことも。ですので、金額や株数までは特定しないでおくことをおすすめします。
③複数人の共同遺言は無効
民法975条において、「共同遺言の禁止」が規定されています。たとえ夫婦であっても共同で遺言書を執筆するのは禁止です。
④ビデオレターでの遺言は無効
遺言書は書面でなければ認められません。ただ、ビデオレターは気持ちを伝えるという面では有効です。遺言書とは別に用意しておくのも一手でしょう。
⑤あいまいな表現をしない
相続させたい相手には、「渡す」や「譲る」、「任せる」などの表現は避け、「相続させる」「遺贈する」などと書くようにしましょう。
⑥遺留分侵害に注意
「遺留分」とは、法定相続人が持つ最低限保障された遺産を取得する権利のことです。遺留分を侵害すると「遺留分侵害額請求権」が発生し、トラブルのもとになります。不平等な相続の仕方はやめましょう。
⑦きちんと保管しておく
自筆証書遺言は、原本が公証役場に保管される公正証書遺言とは異なり、保管についての法的な決まりがありません。発見してもらえないことを避けるため、相続人に預けておくか、自分で保管する場合であれば保管場所をしっかり知らせておきましょう。
また、法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用することもおすすめです。遺言者本人が封をしていない遺言書を法務局に持っていけば保管の申請を行うことができます。
よくある質問
①作成する際の文房具に規定はある?
紙の大きさや向きにも、ペンにも規定はありません。封筒の大きさも自由です。
②封筒の書き方は?
自筆証書遺言は、封筒に入れていなくても有効です。しかし、書き換えや破棄などのリスクを避けるためにもきちんと封筒に入れて保管しておきましょう。
- 封筒の表には「遺言書」と自筆で書く
- 封をのり付けし、ふたの中央に割り印を押す
- 裏に遺言書を書いた日付、「遺言者 ○○○○」と氏名を書き、印を押す
- 裏に「遺言者の死後、開封前に家庭裁判所で検認を受けてください。」と書いておく(※遺族は、自筆証書遺言書を勝手に開けてはいけません。ただし、法務局に保管を依頼した場合は検認は不要です。)
遺言書の封筒への日付の記入や署名押印・裏面の綴じ代のところへの割り印はなくても有効です。ただし、印鑑を使用する際は遺言書の書面に使ったものと同じものを使用しましょう。
封筒の書き方の見本は以下のサイトも参考にしてみてください。
※参照元:終活のグレイスさぽーと|遺言書の封筒
③遺言書の書き換えは可能?
遺言書はいつでも書き換えることが可能です。
書き終わった後も、定期的に見返してみましょう。
最後に
遺言書は、自分の思いを大切な人たちに最後に伝えられる場所。もちろんいくつか決まりはありますが、要件さえ満たしていればそんなに難しいものでもありません。
遺言書には法的効力を与えるための「法定遺言事項」とは別に「付言事項」と呼ばれるものがあります。「付言事項」は自由に文章を作成できる部分で、ご自身の気持ちをストレートに伝えられます。
自筆証書遺言の最後の締めくくりでは、どうしても言えなかったことや今まで伝えられなかった感謝の思いをぜひ大切な方たちに届けてくださいね。