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納棺の儀について

故人を見送るお葬式は2日間で行われることが多いですが、「納棺の儀」とは一日目の通夜の前に行われることが一般的です。故人の遺体を斎場や自宅に安置した後、故人が現世からあの世に旅立てるように支度をする儀式ですが、平服の遺族や近親者のみで執り行われるため、儀式の内容はあまり知られていません。ここでは、「納棺の儀」を行うタイミングや具体的に何を行うのか、その流れなどについてまとめています。

そもそも納棺とは?

納棺とは、「通夜式」の3、4時間前に行われる故人の身体を清める儀式。「納棺の儀」は、納棺師をはじめとする葬祭スタッフのサポートで、遺族が故人の身体を洗い清めて、死に装束を整えて、副葬品を棺の中に納める30分から2時間かかる儀式のことです。

納棺の儀を執り行う納棺師とは

「納棺の儀」で、故人を棺に納めるために、身体を清める湯灌、生き生きした表情を出すための死に化粧や身づくろい、防腐処理などを行うのが納棺師の仕事です。2008年に上映され、アカデミー賞を受賞した映画「おくりびと」で有名になった職業ですが、納棺師になるのに、特に資格は必要ありませんが、細やかな心遣いと技術が必要です。

納棺の儀の流れ

「納棺の儀」は、次の流れで行われます。「末期(まつご)の水」「湯灌(ゆかん)」「死化粧(しにげしょう)」「死装束(しにしょうぞく)の着付け」。順に解説していきます。

末期(まつご)の水

釈迦が入滅する時に水を求めた故事に由来する「末期の水」。現代では「故人に安らかにあの世に旅立ってほしい」という願いを込めて行われます。「末期の水」の儀式では、割り箸に脱脂綿を巻きつけたものに水を含ませて、故人の唇にあてて潤します。口の中に水を入れてはいけません。配偶者、子供、親、兄弟姉妹、子供の配偶者、孫、叔父叔母の順番で儀式を行い、最後に故人の顔をきれいにふきましょう。脱脂綿の代わりに鳥の羽や筆を使う地域もあります。

湯灌(ゆかん)

納棺前に故人の身体を清める儀式が「湯灌(ゆかん)」です。故人の生前の穢れや現世の煩悩を洗い落とす意味もある大切な儀式です。シャワーの湯で故人の身体を洗う「湯灌」と、身体をアルコールで拭いて清める「清拭(せいしき)」の2つの方法がありますが、どちらにしても、家族が行うことで、きちんと故人とお別れする心構えができます。最近では「湯灌」や「清拭」ではなく、殺菌防腐処理をして生前の姿をとどめることができる「エンバーミング」も行われています。

死化粧(しにげしょう)

「死に化粧」は、棺の中で遺体が眠っているかのように、故人の顔や髪を整えて化粧を施す作業です。「湯灌」や「清拭」の後に行われるもの。最初に、死後も伸びた髪や爪を切ります。男性は髭を剃り、顔色が悪ければファンデーションを顔に塗ります。女性には薄化粧をして唇に紅をさします。頬がそげていれば、口の中に綿を積めてふっくらとみせるなど、故人を温和な生前の姿に近づけることで、遺族の気持ちが安らぐ効果があります。

死に化粧(メイク)は、最後に故人様にして差し上げられることとして満足度の高いサービスです。

死装束(しにしょうぞく)の着付け

「湯灌」「死に化粧」の後は、「死に装束を着せる」作業があります。「死に装束」は、故人に着せる最後の衣装になります。基本的には、葬儀社で準備した死に装束の着付けを、葬儀社のスタッフが行います。仏式の葬儀で使われるのは上下白の着物タイプですが、西洋式にレースやオーガンジーをあしらったエンディングドレスを着せることも、遺族の希望で故人が生前気に入って着ていた洋服を着せることも可能。「死に装束」の形も多様化しています。

誰が故人様を棺にお納めするの?

「納棺の儀」には、最初から最後まで遺族が立ち合います。故人を棺に移して布団をかける作業や、副葬品を棺の中に納める作業も、葬祭スタッフと遺族とが一緒に行います。日頃したことのない「湯灌」や「死に化粧」なども、スタッフがサポートするので安心。遺族は「納棺の儀」に参加することで、翌日の「葬儀」「告別式」「火葬」「お骨上げ」の前に故人と静かに向き合い、心穏やかに故人とお別れすることができるのです。

納棺の流れで副葬品は入れられる?

「納棺の時に、故人の愛用品を棺の中に入れてあげたい」と考える遺族の方も少なくありません。副葬品を入れるタイミングは、火葬場に向かう出棺までの間であれば可能なので、納棺の時に副葬品をいれてもかまいません。入れていい副葬品は花・手紙・写真・故人の好きな食べ物や、故人が生前気に入っていた天然素材の服など。入れてはいけない品は、火葬炉や遺骨を傷める金属やプラスチック、合成繊維の服などです。

棺に入れられるものについては下記をご参照ください。

納棺が終わった後の流れは?

「納棺の儀」の後、故人との最後の夜を過ごす「通夜式」。翌日が「葬儀」「告別式」「火葬」「骨上げ」と儀式が続きます。「葬儀」「告別式」は参列者の応対に忙しくなるため、「納棺の儀」が、故人とゆっくり向き合える最後の機会となります。